麺に関わる情報・リポート・論文の専門誌
インタビュー
      ワイエスフード株式会社/代表取締役社長  緒方正年 氏
「体当たりで育てた筑豊人情ラーメン」
より抜粋

(前略)

トラック運転手からラーメン屋へ
奥山 ラーメンの世界に入られたのはいつからですか?
緒方 21か22のときです。
奥山  それまでのお仕事は?
緒方 運送会社に就職して長距離トラックの運転手をしてました。
奥山 長距離トラックの運転手とラーメンというと映画『タンポポ』を想わせますが、まさか社長がモデルだったんではないでしょうね。(笑い)
 で、ラーメンとはどこで結びつくんですか?
緒方 長距離走ってますとドライブインがいろいろあって、休憩や待ち合わせ場所にしています。だいたいトラックの運転手はラーメンが好きなもんですから、ラーメン屋が多かったですね。久留米の方に行けば『丸星ラーメン』とかですね。けど、みんなが美味しいっていう店が、ボクの場合、戸畑(北九州)のあのラーメンが印象に残っているから、特別美味しいと思えんのですよ。
 ラーメン店を始めたキッカケは、「自分で美味しいラーメンつくってみんなに食べさせたい」と思いついたからです。事業を起こして大きくするといった考えはぜんぜんありませんでした。たまたま今の創業店のところに親が土地を持ってたんで、そこに小さなラーメン店をつくったんですよ。会社を辞めて。
奥山 結婚しておられたんでしょう?
緒方 これ(副社長)が生まれて半年くらいです。「とにかく始めようや。食べられんようになったらオレがまたトラックに乗るけん」って言って、店のことは女房に任せて、ラーメンつくりに熱中していました。女房は、豚汁やらギョーザやらつくって、なんとかやっていってくれました。
 こっちは研究、研究、研究ですよ。お客さんに連れてってもろうた店に、何使いよるっちゃろうかと思って、閉店するまで待ってゴミ箱あさったり。裏に積んである醤油の空ビンで銘柄を調べたりしてね。
奥山 まったくの無手勝流で、ラーメン修業もないまま! 多少の知識はあったんでしょう?
緒方 ラーメン店でアルバイトしていた友だちがいたんで、スープのとりかたなんか、ある程度教えてもらいました。
奥山 創業店は今でもあるんですか?
緒方 その場所にあります。

突然のチェーン展開
奥山 チェーン展開はその段階から考えておられたんですか?
緒方 いえいえ。それからずっと個人経営で続けていって、14年前です、フランチャイズチェーン(FC)展開を始めたのは。
 3人の男の子には、みんな店でラーメンつくりの手伝いをさせていまして、将来支店でもつくってやらせようという考えは持っていました。当時ウチで長いこと働いた職人さんに暖簾分けさせたことはあったんですけど、FCについては、どんなものかなという程度の認識しかありませんでした。
 そのころたまたまある広告屋さんが来ましてね、スポーツ紙に広告枠が一つ空いているんで埋めてくれんかって言うんですよ。「ウチはお客さんいっぱい来てるから宣伝なんか必要ない」って断ったんですけど、「3万円でいいから付き合ってくれ」って言われて、書くことがないもんですから「フランチャイズ店募集」って出してもらったんです。そうしたら、あくる日お客さんが現金100万円もって来られたんですよ。この店のチェーン店ならぜったい流行るって。
奥山 方針も準備もマニュアルもないまま?
緒方 ぜんぜんない。(笑い)
 それであわてて出入りの業者に「こないしてFCに加盟したいいうてきたんやけど」いうて、建築業者に契約書のモデルを、厨房業者にマニュアルをつくってもろうたんです。
 「マニュアル」いうてもね、ボクが言うたことをメモしたくらいのもんで、実際には加盟店に家族総出で手伝っていました。
奥山 (副社長に)FC第1号店のオープンの手伝いに行っておられたんですね。おいくつのころでした?
副社長 23くらいでした。
 オープンするときはものすごく忙しくて、お客さん待たせるわけにいきませんから、教えるより自分たちでつくってしまうんです。店長とかいう人はぜんぜん役に立たないんです。そんなに忙しいのを経験してないじゃないですか。ヒマなときにいろいろ教えることにしていました。
奥山 今は分厚い「マニュアルブック」ができているんでしょう?
緒方 はい。
奥山 それ役に立っていますか?
緒方 基本的なことについては役に立っているんですけどね、たとえばスープのとり方で言えば、お昼なんかお客さんが集中しているときのオペレーションの仕方、そういうことが理解されていませんね。オープンのときスーパーバイザーが必ず教えているんですけど。
奥山 マニュアルというのは、想定外の状況にいかに臨機応変に対応するか、その基準としてあると言われていますね。
緒方 そうです。
奥山 オープンして2〜3ヶ月して慣れてきたら例外がいっぱい発生して、さあどう対応するか。そこのところが最初のヤマ場で、いちばんサービスが問題になるんじゃないですか?
緒方 そのとおりです。
奥山 サービスマニュアルがあるんでしょうけど。
緒方 最初から忙しいじゃないですか。ですから接客がきちんとできていない。
 ボクが創業したときなんか、お客さんがあまり来ないもんだから、このお客さんにまた来てほしいなと思うと、必然的に接客を良くせざるをえない。
奥山 40年やってこられて、ひと言でいって「得たもの」は何ですか?
緒方 「人」ですね。「人」というのは支えあうものと昔の人が言ってるように、初期のころの「人」に支えられて今があるんだと、つくづく感じています。当時のお客さんに時たま会うんですが、「ああ、懐かしいね。あんたとこのカアちゃんはよく子どもおんぶして店に出とったね。あのときの子どもをちょっと見せてくれんね」とか言われるんですよ。そういうお客さんが子守りもしてくださいました。これ(副社長)もなついとって、歩行器につかまりながら皿持ってお客さんのところに行ってラーメンもろうて食べよったんですよ。ですからお客さんも特別可愛いんでしょうね。ですから、今思うのは「人」なんですよ。人、人、人・・・。

「ワイエスフード株式会社」略史
    1970 創業
    1992 FC募集開始
    2004 100店舗達成
    2005 ジャスダック上場
        年商=42億2400万円(3月期)
    2006 タイ出店
    2007 店舗数(直営+FC)=173(7月末)
        年商=44億3100万円(3月期)
        資本金=10億205万