麺に関わる情報・リポート・論文の専門誌
    インタビュー
        新横浜ラーメン博物館 館長 岩岡洋志氏
「新横浜ラーメン博物館とラーメンの、これまでとこれから」
より抜粋
(前略)
奥山 いま増築・増設のお話がありましたけれど、どれくらいの規模ですか?
岩岡 1階のスペースが5割増しちょっとです。今年着工して来年竣工します。
奥山 建物として完全にくっつけるんですか?
岩岡 そこはいま検討中ですが、たぶんそうなると思います。
  われわれの目指す方向としては、食文化としてのラーメンを紹介していくこと、そういう部分をおもしろく見せながら、各ラーメン店さんに対しては何か励みになるような機能を設けたいということです。
  要するに切り口の問題ですけど、過去をきちっと調べながら現在・未来のあり方を探っていく。『ラーメン博物館』で取り上げてくれれば、直接店が大きく儲けたりはしないけど、その店にとって子や孫や曾孫の代まで誇りに感じてくれるような、そういうステイタスを確立するため、大きな志をもってスパンの長い活動をしていきたい。例えば、「ラーメン」が中国から入ってきて日本の郷土料理になったように、アジア各地でいろんな料理が生まれているじゃないですか。そんなものをウチが取り上げて伝えることによって世界に認知されるみたいな・・。そうすると息子さんも、「そんなステイタスのある店ならオレも継ごうかな」っていうことになるかもしれない。
奥山 これまで類似の施設と提携したり、指導契約を結んだりしたことがありますか?
岩岡 ないですね。見にきていただいて「ここんところはどうしてるんですか?」と聞かれれば、「われわれはこうしてますよ」「こうしたほうがいいですよ」という話はしています。地域性もわかりませんし、相手の方はビジネスですから、無責任なことは言えません。はっきり言ってわれわれは商売は下手です。概念的な話は、別に隠してるわけではありませんから、いくらでもできるんですけど。
奥山 今後はありえますか?
岩岡 あるとすれば海外でしょうね。あるいは、「ラーメン」じゃない他分野かもしれません。例えば「こんぶ研究所」とか「かつおぶし研究所」とか、そういうところになるかもしれません。
奥山 仕事柄いろいろと相談がありまして、こちらさんにつなごうかと思うような案件もあります。
岩岡 そういうことでしたら、奥山さんが柱となって「奥山ワールド」を構想してみられて、その中で当社につながるものが出てくるようであれば検討する、というのが一番いいと思うんです。
奥山 そういう前提で、こんど何かあったらご相談にうかがいます。
岩岡 その際はお願いいたします。(笑い)
奥山 ところで「ラーメン」の定義をどう考えておられますか?
岩岡 中華麺工業協同組合では「かん水が入っているもの」としていますよね。それ以外は一切ありません。中華麺工業協同組合の定義ではそうなっています。
奥山 実は昨夜、タイラーメンを食べてきました。「トムヤムクンラーメン」って言っていました。トリガラベースの、独特の辛味と酸味を利かせた濃厚なスープにビーフン(米粉)の平打ち麺がよく合っていました。しかしこれは「ラーメン」ではないことになりますね。
岩岡 そうですね・・・。しかし、お客さんに「ラーメン」として受け入れられれば、それがある意味で「ラーメン」になっちゃうんじゃないですか。
奥山 こちらでおかしいとは言えないでしょうね。
岩岡 そのように鑑定をすることに重点をおいていないですから。どちらかと言えば受身ですね、われわれは。ある食べ物が形を変えて定着した、といった例は世界中にいくらでもありますよ。それを「ラーメン」と呼ぶかどうかは別問題で、その積み重ねられたことを紹介していくのがわれわれの仕事です。
奥山 北京のホテルで「ラーメン」だって出されたのが、「具だくさんのスープ煮込みうどん」だったという体験があります。彼らは「ラーメン」は日本の麺料理という認識です。鹹水麺でなくても「ラーメン」って本家本元で言ってるんですから、われわれが抗ったってしようがない・・・。
岩岡 日本のラーメンはすごいですね。中国の方々にそう言っていただけるのですから。
奥山 トッピングですけど、もともと「ラーメンには豚肉」と決まっていたようなもので、北海道「上川ラーメン」の牛肉、鹿児島・串木野の「マグロラーメン」のマグロなどは特殊な例外と考えられています。しかし自由な発想があってもいいわけで、例えば「ラム」を使ったラーメンなんてどうでしょう。
岩岡 ちょっとこれをご覧になってください。(『ラー博TIMES』第24号を示す)
  一昨年6月から四季折々の旬の味をテーマとしたラーメンを代表的な8店に競っていただく「旬麺シリーズ」を始めていますが、その第3弾です。「夏麺」の「枝豆」、「秋麺」の「茄子」についで、「冬麺」では「大根」を取り上げています。ここで札幌の『けやき』さんがラムを使っていますよね。
奥山 (記事を読む)「・・ラム肉を石鍋でシャブシャブするという奇想天外な作品である。麺は特製のかえしダレにつけて食べる『つけ麺』スタイル。アクセントにミニ大根を使用。また、大根と卵白を合わせたものを雪に見立てるなど、一つの作品で和と北海道を上手く表現している」。へえー、おもしろいですね。
岩岡 博多の『ふくちゃんラーメン』さん(*)はモツです。九州のモツ鍋は最後にチャンポン入れますよね。あれ美味いじゃないですか。あれをちょっとアレンジしてます。(*ほかに、『龍上海本店』『支那そばや』『井出商店』『春木屋』『こむらさき』『蜂屋』が出店している。同館ホームページ参照)
奥山 「大根」をテーマにする、こういうことが受け入れられるのが『ラー博』のステイタスそのものではないでしょうか。
  最後に、「ラーメン」のこれからの大きな方向性について、お考えをお聞かせください。
岩岡 21世紀に入りラーメンは多様化の時代に入りました。これからもいろいろなスタイル・価格帯のものが出てくると思われます。ただ、今まで連綿と続いてきたラーメンのスタイルが大きく変わりそれが定着していくことはないように思えます。味に関しては、これから高齢化社会になりますので、アッサリしたダシ感のあるラーメンのニーズが出てくるかもしれません。もちろん若い層にはこれまでのようにわかりやすく、インパクトのある味が受け入れられると思います。そういった意味で「味の二極化」が進むのではないでしょうか。
奥山 『新横浜ラーメン博物館』としては、いかがでしょう。
岩岡 われわれとしてはラーメンのステイタスを上げていきたいと考えております。多くの先人の方々が研究し苦労をされて今に至っています。そして、その苦労から生まれたラーメンを日本の国民食の代表として世界に伝えていきたいと思います。
  そして、ラーメンを通した日中友好交流にかかわっていきたいと思っています。ラーメンの源流ですからね。アジアに発信したり、データベースを構築したり、出版事業を手がけたり、いろいろ考えられますが、いずれにしても増築のあとになります。
奥山 13年間の蓄積が開花を迎えることになりますね。楽しみです。              [完]