奥山 ところで、「経営」というものに対する感覚は日本と違うところがありますか? つまり、日本の場合は「自分の夢を実現する」とか「こだわり」とか、とくに若いラーメン店の経営者がよく言いますよね。ラーメン店に限りません。脱サラで何かにチャレンジする人たちはロマンを求めます。内心はともかく、「金もうけじゃないんだ」というわけです。いっぽう、中国の人たちにはそういった発想はまったくなく、金もうけになるかならないかという点だけで判断すると聞きます。共産主義国家が資本主義化して、いっそう拍車がかかっているというんです。その点いかがでしょう?
重光 やっぱり金もうけでしょうね、中国の人っていうのは。
われわれは直営店でやっていますから、一緒にやっているパートナーとは「この味を伝えていこう」という共通の意識があるんですけど、ほかの方々の話を聞きますと、自分で考えて作ってみようとかっていうのはあまり聞いたことがないですね。しかしいま日本にたくさん中国から若い人たちが留学していますから、おそらく近い将来、そういう人たちが自分で新しいラーメンを作り始めるんじゃないかと思いますね。
奥山 働く側のモチベーションはどうなんでしょう?
重光 彼らはよく働きますよ。忙しい中で一生懸命です。一つにはわれわれが再教育に力を入れていることがあると思います。かつて給与次第の離職が多かったんですが、社内での上のレベルを狙うという考えが出てきました。いま、外部からの協力を得て店長研修を実施しています。
奥山 御社が確立したノウハウには教育プログラムがしっかり組み込まれているんですね。
重光 もう一つ、間もなく旧正月ですが、来週(1月)28日に上海で忘年会がありまして、そこでお店の表彰をします。売上がいいとか、品質管理がいいとかでですね。そういったことも、少しずつモチベーションの向上につながっているんじゃないかと思っています。
奥山 一生懸命やってこられた結果としてそういうシステムが出来上がったんでしょうけど、そこまで来るのがたいへんだったと想像します。
重光 まあ、何年か前は、1000人採用して800人辞めていったとかですね。びっくりしましたよ。
(中略)
ラーメン学校をつくって中国に1000店舗
いずれシャンゼリーゼ大通りに
奥山 中国でラーメンを食べる風景をごらんになって感じることはありますか?
重光 みんな楽しそうですね。日本ではセパレートで食べるというのがはやりで、成熟した社会の姿だというんですが、僕からすると、食事を楽しまないというのはおかしい。
奥山 ラーメンという「モノ」の部分は、味付けも含めて、世界中どこに行っても同じでありえるでしょうが、「コト」の部分、つまり食べられ方はさまざまだと思うんです。そのあたりを研究されることはありますか?
重光 やっぱりそこは現地の方とのコミュニケーションの中で決めていかないとですね。
奥山 味付けを国によって変えることはありませんか?
重光 ありません、絶対に。べた気がしない。
奥山 日本の食文化としての「ラーメン」、しかも熊本発とんこつ味で。
重光 はい。
奥山 あらためて、「ラーメン」について。
重光 麺というのはいろんな形で食べられますから、世界共通の食べ物といえるんじゃないですか。「ラーメン」はその中で日本独自の食べ物だと思います。中国ではもともと「ラーメン」という言い方はしませんからね。
奥山 そうですよね。
ところで、オランダのあとはどんな流れになるでしょうか?
重光 可能性のあるところはどこでも行きます。いまモンゴルの話が進んでいます。ロシアからも話がきています。
奥山 そうなるとラーメン学校のような恒常的な研修施設が要るんじゃありませんか?
重光 いま上海に学校をつくるように計画しています。多店舗展開をしていくには教育システムをしっかりしておかないとですね。
奥山 味千ラーメン学校?
重光 そうです。料理の勉強はもちろん、店舗運営のことなども含めて教育する機関です。いま計画している新工場と一緒につくって2010年に開校する予定です。現地だけでなく、日本からも先生が必要になってくると思います。寮も完備する予定です。
奥山 日本から留学させるのもいいかもしれませんね。
重光 そういうのもありですけど、将来的にはFCも含めて1000店舗にしたいという夢をもっていますので・・・。
奥山 1000店舗!!
重光 中国国内だけでですよ。
奥山 すぐにはピンときませんけど、まあ広大な国土に15億になんなんとする人口がいるわけですから、そう考えると、それも可能かもしれませんね。その「1000」という数字は社長が立てられたんですか?
重光 いや、これは先代からです。先代はずっと「千」という数字にこだわっていましたんで。
奥山 ああ、お父さんのときからですか。
広報室長『味千』の「千」には、いずれ千店にしたいという思いがこめられているんです。
奥山 なるほど。しかしそれはたいへんなことですね。
重光 父がある雑誌のインタビューで「夢」として話しているんです。「シャンゼリーゼ大通りに『味千』のラーメンがあったらいいな」とも言っています。ああやっぱり海外のおしゃれなところでラーメンが食べられるという夢を、もう何十年も前に描いていたんだなあと、あらためて見直したんです。具体的な計画はこれからですけど。
奥山 オランダがヨーロッパ進出の拠点になるんでしょうか。
重光 まだ未知数ですね、そのへんは。
奥山 「シャンゼリーゼ大通りで味千ラーメン」、何だか自分の夢のような気がしてきました。その晴れやかな写真をぜひ小誌の表紙に使わせてください。いろいろと興味深いお話を有難うございました。
(完)