麺に関わる情報・リポート・論文の専門誌
   神戸・新長田
丸五市場に「アジア屋台村」ができる!
座談会
より抜粋

(前略)

「アジア屋台村」の募集始まる
奥山  さて本題に入りますが、「アジア屋台村」のことです。12月29日の読売新聞兵庫版に「丸五市場、アジア色出しにぎわい再び」という見出しの記事(*)がありました。(*「阪神大震災後に営業不振が続き、・・空き店舗も増えてきた今、市場事業協同組合が、東南アジアのマーケットをほうふつとさせる雰囲気を生かそうと計画。出店するアジア料理店の募集を始めた」と記事が続き、「市場の周りには韓国やベトナムの人たちも多く住む。同組合の西村政之・理事長らは、そんな環境を見つめ直し、原点に返ってアジア料理を地域の『売り』にしたいと考えた」「アジア料理店は、昼間に開店でき、最低3か月以上は営業することが条件。家賃は月2万5000円。まずは16.5平方mの2店舗分を募集する」などとある。12月9日の神戸新聞にも「アジアの食で集客」と報道されている)
  たまたまこの記事を見てきょうの座談会を思い立ち、正岡さんにお膳立てをお願いしたわけです。小誌は「麺の世界」と密接不可分の「屋台」にずっと関心をもちつづけているものですから。
  お聞きしたいのは、小誌第4号(06年2月15日発行)の座談会「『お好み焼きの街』からマイノリティー共生のまちづくりへ」(*)がお役に立っていることがあるんでしょうか。(*(株)ながたTMO役員の正岡健二・森崎清登・東朋治各氏、オリバーソース(株)の道満善弘専務取締役、(株)伍魚福の山中勧専務取締役らが出席)
西村  大いにありますよ。だって奥山さんがその座談会で丸五市場のことを気にされて、「アジア屋台村なんかできないか」という発言をしておられたやないですか。1年前ですよ。それに後押しされて今やっと実現しようとしているわけですよ。
  さらにこの4月から商工会議所の事業計画に「アジアの特徴を活かした地域活性化プラン『アジアン・デ・ナガタ』策定事業」(*)が取り上げられるいうんで、これを追い風にしたわけです。

(中略)

奥山  たいへん光栄で嬉しく思います。
  ところで現在何件くらい応募があるんですか?
西村  5店舗です。問い合わせは10件以上あります。(一覧表を示される)

(中略)

長田のアジア、アジアの長田
西村  これがうまくいって定着すれば、空き店舗に困っているほかの商店街にもこの手法を取り入れてもらえるんやないかと思っています。
若狭  今回の丸五市場の取り組みでおもしろいのは、こんな人来て欲しいというのをこっちから提示してることです。そういう例はあまりないんです。取り敢えず何でもいいから空き店舗を埋めてくれというのが普通で・・。コンセプトを絞ることで、ひょっとしたら大阪からも “アジア好き”を呼べるかもしれない。
奥山  「観光」というのはよそから来てもらうことですからね。
若狭  今の人は市場でのコミュニケーションは煩わしくていやや、だからスーパーに行くんやって一概に言っちゃうんですけど、モニター調査してみるとそうとも言えない。若い、3〜4歳の子どもがいるくらいの層で商店街を愛してるいう人がかなり多いんです。丸五市場はそういう人たちに対して門戸を開いておかんとあかん。そういう人たちを獲得せんと市場とか商店街はこれから成り立っていかんやろう思います。
  もともと丸五市場には何となく不思議な魅力があるんです。カルチャーショックです。
正岡  これまでせいぜい半径1キロくらいの商圏でやってきたけど、よその人にとっては非日常的な空間で、魅力的なんやろうな。
若狭  確かに、市場の空間には猥雑さいうんか、なにかドキドキさせるようなもんがありますね。ある世代には原風景として懐かしかったり、映画の中でしか見たことのない若い世代もいるだろうし。
正岡  むかし「二葉新地」いう花街があったからかいな。・・・しかしもう50年も前の話やで。
  要は丸五市場は地域の人だけをターゲットにしたらいかんいうことをここで反省せんなあかんな。
奥山  基礎票はやはり地域ですよ。
正岡  しかしそれだけでは当選できない。
西村  浮動票をどれだけ取り込めるかでしょうね。無党派票をどれだけ集めるか・・。
奥山  観光客をですね。
入谷  買い物だけでなしに、さっきのコミュニティースペースでもいいんですけど、アジア食堂みたいなもんは受ける思います。東南アジアの屋台なんかにあこがれてますもんね。
奥山  タイの水上屋台とか・・。よく、なんで足元の日本に魅力を感じないかと言われるんですが、そんなことないですよ。
西村  平成9年(1997)の3月に「アジア丸ごと市」をやったときは、インドやら中国やらベトナムやらの出店があって、ものすごい人が来ました。
奥山  そんなことがあったんですか?
正岡  あったんです。問題は一過性だったことで、きちんとしたコンセプトとか意思疎通がなかった。そやから経験の蓄積がなく、企画力になってない。
  こんど大事なんは、この街に新しいことを仕掛けるいうんやなくて、もともと素地としてあるこの地域の特性を活かしていこうという明確なコンセプトがあることです。
入谷  もともとの発端は、おととし、会議所と神戸定住外国人支援センターが共催した「多文化を活かして商店街を活性化しよう」というシンポジウムです。ゲストの旅行社の方から、今すごくベトナムが若い女性に人気がある、そういうのを活かせへんのはもったいない、いう指摘がありました。長田区はベトナムの人がたくさんいらっしゃるという、全国でもめずらしい地域でもあります。
奥山  (第4号をみながら)長田区の05年末現在の登録外国人数は7853人で、うち韓国・朝鮮=6428人、ベトナム=713人、中国=488人、フィリピン=52人、インドネシア=11人、インド=6人、タイ=3人となっています。
  震災後コリアンが減っていってるのに対して、ベトナムの人はどんどん増えていってます。一世の人たちが結婚適齢期になって、男性はベトナムから奥さんを連れて来、女性はベトナム人同士や日本人と結婚することが多いんですが、子どもが多いんですよ。3人とか4人とかですね。
西村  定住外国人は長田区10万強の人口の1割弱ですからね。
  この地域の特徴は、お好み焼き・鉄板焼きの街、ケミカルシューズの街、もう一つはアジアの方がたくさんいらっしゃるいうことです。「FMわいわい」(*)みたいな活動が全国に先立って行われました。この大きな3つの特徴をうまく発信していくことが街の活性化につながるいうことです。(*多言語によるコミュニティー放送局。95年の阪神淡路大震災の際のゲリラ放送が翌年公認されたもの)

農村との交流も視野に
奥山  昨年の座談会で、「異文化の人たちとの共生」「高齢者との共生」を強調されたみなさんについで、私は「農村との交流」を提案しています。都市の活性化に対して農村の果たす役割はさまざまに論じられていますが、ここであえて私が指摘したいことの一つは、「いなか」をもたない都市の子どもたちにそれをもたらすということです。長田の場合、例えば神戸で生まれたベトナムの人たちの子どもが含まれるのはもちろんです。このことは同時に、農村の子どもたちに異文化に接する機会を与えるということでもあります。二つ目は、異次元の文化が出会い融合する場を出現させるということです。「麺文化」という観点からすれば、これはたいへん重大な事件となりえます。
  ここでいう「麺」は「小麦粉食品」と「穀物粉を細長く加工した食品」を指し、ウドン・ソバはもとより、お好み焼き・タコ焼き・おやきなどを含みます。そして、ベトナムの「フォー」のような、タイや台湾にも多いビーフン(米粉)をもちろん含みます。「屋台」で育てられたものがほとんどで、今でも密接な関係があります。
西村  こんど応募された方に佐用町のTKさんがおられます。「ホルモン焼うどん」の店を希望しておられる方です。もし決まったら一つのキッカケになりますよね。店の横で特産品を出してもろてもいいし・・。
入谷  農村の人はエネルギーがありますしね。
奥山  恒常的な関係をもつため、佐用町と丸五市場が提携交流協定を結ぶことを考えてはどうでしょう。固苦しく考えないで。基礎票が増えるし、ニュースバリューもあります。
正岡  何でもやってみたらええねん。失敗を恐れたらあかん。万一失敗しても経験が残る。そこには「反省」というすごい財産が残る。初めからいい悪いの議論をせんことや。
奥山  少し脱線しますが、近くの「駒ヶ林」地区のことです。古い漁港で、今も魚市場があります。漁師料理の店とか海鮮料理の店でもあるんですか?
正岡  ないなあ。寿司屋は多いけど。
奥山  サンフランシスコのフィッシャーマンズ・ウォーフのような構想でもあれば、「二葉」地区の丸五市場と連携した「ダウンタウン長田の観光ブランド」が間違いなくできると思うんですが・・・。
正岡  源平合戦の史跡もあるしなぁ。
奥山  簡潔にまとめますと、アジア・高齢者・農村、この3つを重層的に取り入れ、相乗効果によって活性化を図るということになりましょうか。その核として丸五市場があり、「アジア屋台村」構想があるという位置づけになると思います。
西村  街づくりいうのは、楽しいところがありますね。みんなが知恵出し合うて、一つの方向性が見えたら、それに向かってみんなが力を合わせてやっていく・・・。
奥山  西村さんや正岡さんのような熱意をもった地元の方がおられ、入谷さん、若狭さん、金さんのようなサポーターがおられるのですから、必ずや実を結ぶにちがいありません。
  本日は有難うございました。                                  [完]


【出席者】
     西村  政之                丸五市場事業協同組合理事長
     若狭  健作               (株)地域環境計画研究所まちづくりプランナー
     正岡  健二                神戸ながたTMO取締役運営委員長
     入谷  仁得                神戸商工会議所西神戸支部事務長
     金    宣吉                  NPO法人神戸定住外国人支援センター理事長
     司会/本誌編集長    奥山  忠政