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第6号 「麺の伝道師」藤井薫氏を大和製作所 グループに訪ねて(奥山忠政)より抜粋
「熟成」の意味、デンプンの役割
大和製作所の製麺機は画期的と聞いていた。
製麺機の原理は、明治21年の「真崎麺機(麺類製造器械)」(特許第448号)以来、基本的に変わっていない。問題は「熟成」をどう理解し、どう工程に取り入れるかであり、これを成し遂げた点が「画期的」だったのである。
「当社は業界で初めて『熟成』を解明しました」と藤井氏は言う。伝統的な「生地を寝かせる」ことの意義は、
第一に、小麦粉のひと粒ひと粒に水分を浸透させることであり、第二に、グルテン形成で生じたストレス(内部応力)を解放することにあると分析したのである。
後者は、「鍛えれば鍛えるほどコシが強くなる」という「常識」に反するもので、形成されたグルテンが安定する時間を与えたほうがかえってコシが強くなるというのである。
「麺生地も人間と同じ生き物です。人間が一生懸命働いたあとじゅうぶんな睡眠をとってストレスを発散しなければ健康に生き続けられないように、美味しい麺作りにもじゅうぶんな熟成が必要なのです」(藤井氏)というたとえは感覚的に解りやすいが、多少科学的な説明に置き換えると、力が加えられて形成されたグルテン組織は張り詰めた状態にあり、
そのまま力を加え続けると組織はその力に耐えられずに壊れてバラバラになってしまうので、いったん休めて安定させてから次の作業にかかるほうが良い、ということになる。
「讃岐うどんは硬いもの」という誤解が実際にある。「コシ」が理解されていないのである。
「コシ」を表現するのは難しい。「もちもち感」とか「ビョーンと跳ね返るような弾力」とか「アル・デンテ」とか、
ガイドブックにはさまざまな言葉が動員されているが、真に理解しようとするなら、やはり本物を体感してもらうしかない。すぐれて感性の世界だからである。
強いて言えば「しなやかさ」に近いかとも思う。
方向を変えて「構造」から見てみよう。うどんの構造は鉄筋コンクリートの柱にたとえられる。
グルテンが鉄筋でデンプンがセメントと思えばいい。「鉄」は誤解されそうなので「軟骨のスジ」くらいがいいかもしれない。
いっそうのことフランスパンみたいな「麩」はどうか。
グルテンそのものでもあるし・・・。いずれにせよ、筋が壊れて筋でなくなり、セメントと混ざって固まってしまったのが「硬いうどん」という説明はどうだろう。
そこでもう一方の主役のデンプンである。藤井氏は、うどんの食感を左右するのは「デンプンの粘り強さ」にあるとし、「アミロ値」を武器に原料粉を追究していった。
われわれはうどんにおけるデンプンの役割を軽視しがちである。しかし考えてみればイネと共通の部分であり、もともとデンプンの味覚にデリケートな民族性をもっていたのではないかと思い至る。
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